空間を思い浮かべて頂きたい。
その空間に無数の点を無作為にちりばめてみる。
そして、直線a、直線b、直線c…と無数の直線を無作為に描く。
すると、無作為な無数の点は無数の直線によって定義される。
例えば、この直線aをIQだとしよう。それぞれの点は一つのIQ得点の上に定義される。そして、直線bを経済力得点だとしよう。それぞれの点は一つの経済力得点の上に定義される。直線cはちょっと質が違って、病気である・ないの二つの値しかないとしよう。それぞれの点は二つの得点のどちらかの上に定義される。そして、この一つ一つの点は一人の人間を表すわけだ。
もちろん、世界はこんな単純なモデルでとらえることなんて出来ないだろうけどあえてわかりやすいようにこのモデルで考える。
無作為に描いた直線の幾つかを取り出して考えてみる。抽出の方法は無作為ではなくある程度作為的だ。どういう風に作為的かというと、直線の重要さが重み付けされているという点と、ある直線が他の直線によって定義されていると言う点だ。つまり、おおまかに考えると、直線はある一定の方向を向いているということだ。
期せずして、ヒゲ氏がその日記の中で「制度」というものを取り上げているが、その話とこの話は無関係ではない。直線の集まりは制度そのものである。
話のレベルを変えよう。僕は今小学校に教師として入っていて子ども相手に仕事をしている。小学校には特殊学級というのがあって、いわゆる障害児がそこで勉強している。勉強していると言ったらやや御幣があるか。殆どは遊んでいる。そして、僕もその中に参加している。
特殊学級の意義はなんて話をする以前に、学校とはそもそも何かということをすら、その障害児と関わっていて思う。交流学級で所属しているクラスでは勉強が出来ない。そもそも勉強ということすら出来ない。出来ることはせいぜい子守りくらい。その子守りをしながら学校教育はなんだろうかと考える自分の無力さが歯がゆい。義務教育は一体何を保障するのだろうか。
今、この子たちはここで遊んでいるけれど、10年後社会に出て、彼らはどういう生活を送るのかと考えると心配になる。まあ、「心配になる」と言う時点で僕自身何様のつもりだっていう感じがするけれど、その疑問はおいといてとにかく心配になる。だから、出来るだけ、健常な子とかかわりあえるようなレベルまで持っていこうとする。つまり、スキルアップをはかろうとするのだ。障害は軽減されるに越したことはないと素朴にそう思う。
一方、ふと考えてみると、障害は個性だという考え方もある。ノーマライゼーションという考え方や、グローバルデザインといういう考え方もある。障害があっても、そのままで健常者と同じ水準の利便性や暮らしを保障すべきではないかということなのだと思う。
また、もう一方で、出生前診断という技術もある。これがあると、重篤な先天的障害児の出生を防ぐことが出来る。この「防ぐ」というのがあいまいな言い方で、はっきり言えば中絶してしまえということだ。そうすれば、障害者福祉につぎ込む社会資本が節約されるという考え方。それもある意味事実ではあるなあとも思う。
なんて、うだうだと考えているのは、基本的には社会の「制度」のベースに乗る立場で話すか、乗らない立場で話すかの違いなのだと思う。
しかしながら、一人の障害児を前にして、自分が「制度」のベースにのってその利益をより受けている人間の一人であることは明白だ。その「制度」を疑うことは可能だけど、厳然と目の前に存在するこの「制度」を否定することはできない。
つまりは、僕のする教育というのが今の「制度」に乗っかんなさいというレベルの話でしかないということだ。仕方の無いことだけれどもこれは明らかに事実。読み書き倫理を教える。上靴はちゃんと履きなさい。なにかしてもらったらありがとうを言いなさい。
しかし、果たしてこれはいいことなのか。当該文化の文脈に子どもを矯正しようとしているのではないか。これは障害児に対してだけでなくあらゆる子どもの教育を考えたときに生じる問題だ。
当該社会とは何だろう。それを先験的に認めることが教育の基盤にあるのか。そこを出発点としないと教育はありえないのかも知れないとも思う。
つらつらと思うことを適当に書いた。実践には悩みがある。引き裂かれるような思いをすることがある。それでいて何かを教えなければいけないというのはすごく難しい作業なのだなあと思った。
そうそう、全校の小学校に配布された「心のノート」というものの話題が出た。河合隼雄なんかが作ったらしい。低学年のものは評価が高かったが、高学年のものは、僕は見ていないのだけど、愛国心を鼓舞したり宗教心を煽ったりする意図があるのではないかと同僚の先生は言われていた。教育は国家が行うものだとすれば、国家が保持したい文脈に子どもを順応させるのが教育のありかただろう。
でもそれなら、僕は教育するということにあまり希望が持てないことも確かだ。
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